平成30年度司法書士試験の模試

平成30年度司法書士試験の模試

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開始時間と現在時間です

試験の説明

【午前の部】

・試験時間は, 2 時間です。
・試験問題は,全て多肢択一式で,全部で 35 問あり,105 点満点です。

【午後の部】

・試験時間は, 3 時間です。
・試験問題は,多肢択一式問題(第 1 問から第 35 問まで)と記述式問題(第 36 問及び第 37問)から成り,配点は,多肢択一式が 105 点満点,記述式が 70 点満点です。


※記述式問題を除いた、70問を掲載しています。

開始時間
現在時間

問1

プライバシーに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 少年法第 61 条が禁止する報道に当たるかどうかは,その記事等により,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断される。

イ 刑事事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められたとしても,ノンフィクション作品において当該刑事事件の当事者について実名を明らかにすることは許されない。

ウ 大学主催の講演会に参加を希望する学生から収集した学籍番号,氏名,住所及び電話番号は,大学が参加者に無断で警察に開示したとしても,プライバシーを侵害するものとはいえない。

エ 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の氏名,生年月日,性別,住所等の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当該住民が同意しない限り許されない。

オ みだりに指紋の押なつを強制されない自由は,在留外国人にも保障される。

(参考)
少年法
第 61 条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

問2

法の下の平等に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 憲法第 14 条第 1 項に基づいて,国に対し,現実に生じている経済的不平等を是正するために金銭給付を求める権利が認められる。

イ 憲法第 14 条第 1 項は,事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱いをすることを許容している。

ウ 憲法第 14 条第 1 項の「信条」とは,宗教上の信仰を意味するにとどまらず,広く思想上,政治上の主義を含む。

エ 憲法第 14 条第 1 項の「人種,信条,性別,社会的身分又は門地」は,限定的に列挙されたものである。

オ 高齢者であることは,憲法第 14 条第 1 項の「社会的身分」に当たる。

(参考)
憲法
第 14 条 すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分
又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2 ・ 3  (略)

問3

次の文章は,条例制定権についての文章である。判例の趣旨に照らし,(   )の中に後記の語句群の中から適切な語句を選択して文章を完成させた場合に,( ア )から( オ )までに入る語句の組合せとして,最も適切なものは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく,それぞれの趣旨,( ア ),内容及び効果を比較し,両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。
例えば,ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも,当該法令全体からみて,当該規定の欠如が特にその事項について( イ )であると解されるときは,これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなり得る。
逆に,ある事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも,後者が前者とは別の( ア )に基づく規律を意図するものであり,その適用によって前者の規定の意図する( ア )と効果を阻害することがないときや,両者が同一の( ア )に出たものであっても,国の法令が必ずしもその規定によって( ウ )ではなく,( エ )であると解されるときは,国の法令と条例との間には矛盾抵触はなく,条例が国の法令に違反する問題は生じない。
また,条例で罰則を定める場合,罪刑法定主義を定めた憲法第 31 条との関係でも問題となるが,憲法第 31 条は,必ずしも刑罰が全て法律そのもので定められなければならないとするものではなく,法律の授権によって,それ以下の法令によって定めることもできると解すべきである上,法律の授権については,( オ )。

【語句群】
目的
立法の経緯
全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨
条例において法令の細目を定めることを委任する趣旨
地方の実情に応じて別段の規制を施すことを容認する趣旨
いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨
相当な程度に具体的であり,限定されていれば足りると解される
包括的な委任があれば足りると解される

問4

無効又は取消しに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 被保佐人Aは,その所有する甲土地を,保佐人Bの同意を得ずにCに売却した。この場合において,Aは,Bの同意がなくても,Cとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができる。

イ Aは,その所有する甲土地のBへの売却がBの詐欺によることに気付いた後,甲土地の売買代金債権をBの詐欺につき善意無過失のCに譲渡した。この場合において,Aは,Bの詐欺を理由に,Bとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができる。

ウ Aは,その所有する甲土地をBの強迫によりBに売却し,Bへの所有権の移転の登記を経由した。その後,Bが甲土地をBの強迫について善意のCに売却し,Cへの所有権の移転の登記を経由した。この場合において,Aは,Bの強迫を理由にBとの間の甲土地の売買契約を取り消して,Cに対し,甲土地の返還を請求することができない。

エ Aは,その所有する甲土地を錯誤によりBに売却した。その錯誤がAの重大な過失によるものであった場合であっても,BがAの錯誤を認識していたときは,Aは,錯誤を理由として,Bとの間の甲土地の売買契約の無効を主張することができる。

オ Aは,その所有する甲土地のBへの売却をBとの間で仮装した。その後,Bが当該仮装の事実について善意無過失のCに甲土地を譲渡した場合において,Aは,Cに対し,虚偽表示を理由に,甲土地の返還を請求することができない。

問5

次の記述は,代理に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

教授: AとBとの間で,Aの代理人としてAの所有する甲不動産をCに売り渡す契約を締結する権限をBに与える委任契約を締結したという事例を前提として,代理について考えてみましょう。Bに代理権を授与した後,Aが破産手続開始の決定を受けた場合において,Bの代理権は消滅しますか。

学生:ア 本人が破産手続開始の決定を受けたことは代理権の消滅事由とされていませんので,Bの代理権は消滅しません。

教授: Bが,Aの許諾を得て復代理人Dを選任した場合において,その後,Bの代理権が消滅したときは,Dの代理権は消滅しますか。

学生:イ Dの代理権は,Bの代理権を基礎とするものですので,Bの代理権が消滅すれば,Dの代理権も消滅します。

教授: Bが,Cからも代理権を授与され,AとC双方の代理人としてAC間の売買契約を締結した場合には,当該売買契約の効力はどうなりますか。

学生:ウ AC間の売買契約は,無効となり,追認することもできません。

教授: Bが,Aから授与された代理権の範囲内でAの代理人としてCとの間でAの所有する甲不動産を売り渡す契約を締結したものの,その際,BがCから受け取った売買代金を着服する意図を有していた場合には,当該契約の効力は,Aに帰属しますか。

学生:エ Cが,Bの代金着服の意図を知らなかったのであれば,知らなかったことについてCに過失があったとしても,当該契約の効力は,Aに帰属します。

教授: それでは,AとBとの間で,Aの代理人としてCの占有する高名な乙絵画を買い受ける契約を締結する権限をBに与える委任契約を締結していたものとします。Bが,Aの指図に従いCとの間で乙絵画の売買契約を締結してその引渡しを受けたものの,Cが乙絵画について無権利者であった場合に,Aは乙絵画を即時取得することができますか。

学生:オ Cが無権利者であることについて,Bが善意無過失であったとしても,Aが善意無過失でなければ,Aは乙絵画を即時取得することができません。

問6

時効に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 貸金債務を負う者が死亡し,その者に複数の相続人がいる場合において,遺産の分割の際にその貸金債務を負担する相続人を決定したときは,その決定した時から 6 か月を経過するまでの間は,その貸金債務について消滅時効は完成しない。

イ 売買契約において,売主が,自己の目的物引渡債務を履行していないにもかかわらず,代金の支払期限が到来したことから買主に対し売買代金支払債務の履行を催告した場合において,催告の時から 6 か月以内に支払督促の申立てをしたときは,その売買代金支払債務について消滅時効は中断する。

ウ 未成年者がその法定代理人の同意を得ずに債権者に対しその債務を承認した場合には,法定代理人がその承認を取り消したときであっても,その債権の消滅時効は中断する。

エ AとBが共同の不法行為によってCに損害を加えた場合には,CがAに対し裁判上の請求をしたときであっても,Bに対する損害賠償請求権の消滅時効は中断しない。

オ 不動産の占有者が第三者の侵奪行為によってその占有を失った場合であっても,その後,占有回収の訴えによってその占有を回復したときは,当該占有者による不動産の取得時効は中断しない。

問7

物権的請求権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aの所有する甲土地の上にBが無権原で自己所有の乙建物を建てた後,乙建物につきBの妻であるCの承諾を得てC名義で所有権の保存の登記がされたときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権に基づき,建物収去土地明渡しを請求することができない。

イ Aの所有する甲土地の上にBが無権原で自己所有の乙建物を建てた後,その所有権の保存の登記をしないまま,Cに乙建物を譲渡した場合において,乙建物につき,Aの申立てにより処分禁止の仮処分命令がされ,裁判所書記官の嘱託によるB名義の所有権の保存の登記がされたときは,Aは,Bに対し,甲土地の所有権に基づき,建物収去土地明渡しを請求することができる。

ウ Aが,Bの所有する甲建物を無権原で占有し,甲建物に増築をした場合には,当該増築部分が甲建物の構成部分になったときであっても,Bは,Aに対し,甲建物の所有権に基づき,当該増築部分の撤去を請求することができる。

エ Aの所有する甲土地から,Bの所有する乙土地に土砂が流れ込むおそれがある場合には,Aが自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあっても,Bは,Aに対し,乙土地の所有権に基づき,予防措置を請求することができる。

オ Aが,Bとの間で,Aの所有する甲土地につき譲渡担保を設定し,所有権の移転の登記がされた場合において,Cが甲土地上に無権原で乙建物を建てて甲土地を占有しているときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権に基づき,建物収去土地明渡しを請求することができない。

問8

即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aが,Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けた場合において,契約締結時にCが無権利者であることにつき善意無過失であるときは,現実の引渡しを受けるまでにCが無権利者であることを知ったとしても,Aは動産甲を即時取得する。

イ Aが,Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において,即時取得を主張するためには,自己に過失がなかったことを立証しなければならない。

ウ Aが,未成年者であるBから,Bの所有する動産甲を買い受けて現実の引渡しを受けた場合において,Bが未成年者であることについて善意無過失であるときは,Bがその売買契約を取り消したときであっても,Aは動産甲を即時取得する。

エ A株式会社の代表取締役Bから代理権を与えられたCが,Aのためにすることを示して動産甲を無権利のDから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において,Dが無権利者であることにつきBは善意無過失であるが,Cは善意有過失であるときは,Aは動産甲を即時取得することはできない。

オ Aに対して金銭債務を負担するBが,当該金銭債務を担保するために,他人の所有する動産甲につき無権利で質権を設定してAに現実の引渡しをした場合において,Aが,Bが無権利者であることにつき善意無過失であるときは,Aは動産甲について質権を即時取得する。

問9

相隣関係に関する次の 1 から 4 までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものは,どれか。

問10

A,B及びCが各 3 分の 1 の持分の割合で甲土地及び甲土地上の立木を共有している場合の法律関係に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア A,B及びCが全員で甲土地をDに賃貸した場合,その賃貸借契約を解除するためには,A,B及びCの全員が解除権を行使しなければならない。

イ Aが,Bが負担すべき甲土地上の立木の管理費用を立て替えた後に,Bが甲土地及び甲土地上の立木の共有持分をDに譲渡した場合,Aは,Dに対してその立替金の支払を請求することができる。

ウ Aは,B及びCの同意がなくても,甲土地の自己の持分に抵当権を設定することができる。

エ Aは,甲土地上の立木を不法に伐採したDに対し,単独では,その損害賠償を求めることはできない。

オ Aが,B及びCの同意を得ないで甲土地上の立木を伐採しようとしている場合,Bは,Aに対し,単独で伐採の禁止を求めることはできない。

問11

地役権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 地役権者がその権利の一部を行使しないときは,その部分のみが時効によって消滅する。

イ 地役権を設定する際には,地役権者が承役地の所有者に対して支払うべき土地使用の対価の額を定めなければならない。

ウ 土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは,他の共有者も,これを取得する。

エ 要役地の所有権とともに地役権が移転した場合,要役地の所有権の移転の登記がされていても,地役権の移転の登記をしていなければ,地役権の移転を受けた者は,これを第三者に対抗することができない。

オ 地役権者は,承役地を不法占有する第三者に対し,地役権に基づく返還請求権を行使することができない。

問12

担保物権の性質について説明した次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 民法の規定する担保物権の中で留置的効力を有するのは,留置権のみである。

イ 民法の規定する約定担保物権は,いずれも,優先弁済的効力を有する。

ウ 一般の先取特権は,担保物権の不可分性を有しない。

エ 動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。

オ 金銭消費貸借の合意がされたが金銭の授受が未了の間に,金銭の授受により発生する予定の貸金債権を担保するために設定された抵当権は,後に金銭の授受があったとしても,付従性により無効である。

問13

民法上の留置権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 留置権者は,留置物の所有者である債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸した場合には,その賃料を被担保債権の弁済に充当することができる。

イ 留置権者が留置物の所有者である債務者の承諾を得ないで留置物に質権を設定した場合には,債務者は,留置権者に対し,留置権の消滅を請求することができる。

ウ 留置権者以外の者が留置物を占有している場合には,留置権者は,占有者に対し,留置権に基づき,目的物の占有を自己に移転するよう請求することができる。

エ 留置権者が留置物の所有者である債務者から留置物の返還請求を受け,訴訟において留置権の抗弁を主張した場合であっても,被担保債権についての消滅時効の中断の効果は生じない。

オ 留置権者が留置物について必要費を支出した場合において,これによる価格の増加が現存しないときは,所有者にその償還をさせることはできない。

問14

AのBに対する金銭債権を担保するために,B所有の甲土地及びその上の乙建物に抵当権が設定され,その旨の登記をした後に,CがBから乙建物を賃借して使用収益していた場合に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア CがBの承諾を得て乙建物をDに適法に転貸した場合,Aは,Cが取得すべき転貸賃料債権について,物上代位権を行使することができる。

イ CがBの承諾を得て取り替えた乙建物の内外を遮断するガラス戸には,Aの抵当権の効力が及ばない。

ウ Cが抵当権設定当時から甲土地に設置されていた石灯籠を甲土地から不法に搬出しようとしている場合,Aは,Cに対し,搬出の禁止を求めることができる。

エ BのAに対する被担保債務につき債務不履行が生じた場合,その後にBがCから受領した乙建物の賃料は,Aに対する不当利得となる。

オ Aの抵当権が実行され,Dが競売により甲土地及び乙建物を買い受けた場合,買受けの時から 6 か月を経過するまでは,Cは乙建物をDに引き渡す必要がない。

問15

Aは,Bに対する貸金債権(元金のほか,利息及び遅延損害金を含む。)を担保するために,Bから,構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保として,甲倉庫内にある全ての鋼材についての帰属清算型の譲渡担保権の設定を受け,占有改定の方法によりその引渡しを受けた。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Bは,Aに対する譲渡担保権の設定に先立ち,Cに対して,甲倉庫内にある全ての鋼材を目的とする譲渡担保権を設定し,占有改定の方法による引渡しをしていたが,その事実をAに伝えていなかった。この場合において,BがAに対する貸金債務の弁済期を徒過したときは,Aは,譲渡担保権を実行することができる。

イ Bは,Aに対する譲渡担保権設定後,通常の営業の一環として,Cに対して,甲倉庫内にある鋼材の一部を売却し,Cの管理する乙倉庫に搬入した。この場合において,Bが貸金債務の弁済期を徒過していたときであっても,Aは,乙倉庫に搬入された鋼材について譲渡担保権を実行することができない。

ウ 甲倉庫内にある全ての鋼材は,BがCから買い受けたものであるが,Bはその代金をCに支払っていなかった。この場合において,Cが動産売買の先取特権に基づいて,甲倉庫内にある鋼材の競売の申立てをしたときは,Aは,譲渡担保権を主張して,当該競売手続の不許を求めることができない。

エ Aが譲渡担保権を実行しようとした際には, 5 年分の遅延損害金が発生していた。この場合において,Aの譲渡担保権によって担保される遅延損害金の範囲は,最後の2 年分に限られない。

オ Bが貸金債務の弁済期を徒過した後,Aは,Cに対して,甲倉庫内にある全ての鋼材を売却した。この場合において,AがBに対して清算金支払債務を負うときは,Bは,Aが清算金支払債務を履行するまでの間に,Aに対する貸金債務の弁済をすれば,Cに対して,鋼材の所有権を主張することができる。

問16

詐害行為取消権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 被保全債権が発生し,かつ,その履行期が到来した後にされた行為でなければ,これについて詐害行為取消権を行使することはできない。

イ 特定物の引渡請求権の債務者が当該特定物を処分することにより無資力となった場合には,当該引渡請求権が金銭債権に転じていなかったとしても,当該引渡請求権の債権者は,当該処分について詐害行為取消権を行使することができる。

ウ 詐害行為の受益者が債権者を害すべき事実について悪意である場合において,転得者が善意であるときは,転得者に対して詐害行為取消権を行使することはできない。

エ 債権者が受益者に対して詐害行為取消権を行使し,詐害行為を取り消す旨の認容判決が確定した場合であっても,債務者は,受益者に対して,当該詐害行為が取り消されたことを前提とする請求をすることはできない。

オ 金銭債務に対する弁済については,過大な代物弁済である場合を除き,詐害行為取消権を行使することはできない。

問17

弁済に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 金銭債権について,外国の通貨で債権額を指定したときは,債務者は,履行地における為替相場により,日本の通貨で弁済をすることができる。

イ 法律行為の当事者が第三者の弁済を禁止する意思を表示したときは,弁済について利害関係を有する第三者であっても,弁済をすることができない。

ウ 債権の目的が特定物の引渡しである場合において,別段の意思表示がないときは,弁済をする者は,債権発生の時の現状でその物を引き渡さなければならない。

エ 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは,特定物の引渡しは,引渡しをすべき時にその物が存在する場所において,しなければならない。

オ 弁済の費用について別段の意思表示がないときは,その費用は債務者の負担となるが,債権者の行為によって弁済の費用が増加したときは,その増加額は債権者の負担となる。

問18

契約の解除に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 債務の履行の催告と同時に,催告期間内に履行しないことを条件とする解除の意思表示をしても,この意思表示は無効である。

イ 当事者が契約をした主たる目的の達成に必須的でない付随的義務の履行を怠った場合であっても,相手方は,その履行を催告したのに相当期間内に履行がされないときは,契約の解除をすることができる。

ウ 売買の目的である土地について第三者が登記をした賃借権を有していたときは,買主は,当該土地の引渡しを受けた時から 1 年以内に限り,売買契約の解除をすることができる。

エ 買主が数人いる中古車の売買につき,引き渡された中古車に瑕疵があるために買主に解除権が発生した場合において,買主の一人の過失によって売買の目的である中古車を売主に返還することができなくなったときは,他の買主についても,解除権は消滅する。

オ 第三者の所有する土地を目的とする売買契約であることを契約時に知っていた買主Aは,売主Bから当該土地の引渡しを受けたものの,その後,当該土地の所有権の移転を受けることができなかった。この場合において,売買契約を解除したAは,Bに対し,当該土地の使用利益を返還すべき義務を負う。

問19

委任契約又は請負契約に関する次のアからオまでの記述のうち,「この契約」が委任契約である場合にのみ正しいこととなるものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア この契約は,各当事者がいつでもその解除をすることができるが,相手方にとって不利な時期に解除をするには,やむを得ない事由が必要である。

イ この契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。

ウ この契約は,有償契約のものも,無償契約のものもある。

エ この契約の当事者の一方による解除は,将来に向かってのみその効力を生ずる。

オ この契約は,当事者のいずれかが後見開始の審判を受けた場合には,終了する。

問20

夫婦の財産関係に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 夫婦は,婚姻の届出後に法定財産制と異なる契約をし,その登記をすれば,これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができる。

イ 夫婦の一方は,夫婦間でした契約であっても,婚姻が実質的に破綻した後は,夫婦間でしたものであることを理由として取り消すことができない。

ウ 夫婦の一方が相続によって取得した財産であっても,婚姻中に取得したものであれば,夫婦の共有に属するものと推定される。

エ 夫婦の一方は,夫婦の日常の家事に関する法律行為について,配偶者による代理権の授与がなくても,配偶者を代理してその法律行為をする権限を有する。

オ 夫婦の一方は,婚姻が破綻して配偶者及び子と別居しているときは,子の養育費を分担する義務を負うが,配偶者の生活費を分担する義務を負わない。

問21

認知に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 父は,子が出生した後でなければ,その子を認知することができない。

イ 認知された子は,その認知が真実に反することを理由として,認知無効の訴えを提起することができる。

ウ 成年の子を認知するためには,その承諾を得なければならない。

エ 血縁上の親子関係がない者を認知した者は,認知の時にそのことを知っていたときは,自らした認知の無効を主張することができない。

オ 嫡出でない子の出生後にその血縁上の父母が婚姻し,その婚姻中に父が子を認知したときは,子はその出生の時に遡って嫡出子の身分を取得する。

問22

共同相続に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは,他の共同相続人は,遺産の分割が終了するまでの間であればいつでも,当該第三者に対してその価額及び費用を償還して,その相続分を譲り受けることができる。

イ 共同相続人の一人が遺産である現金を相続開始時に保管していたときは,他の共同相続人は,遺産の分割前であっても,当該現金を保管していた共同相続人に対し,当該現金の額に自己の相続分を乗じた額の金銭の支払を請求することができる。

ウ 共同相続人の一人が遺産の分割により遺産である不動産の所有権全部を取得したときであっても,他の共同相続人は,相続開始から遺産の分割までの間に当該不動産から生じた賃料債権をその相続分に応じて取得する。

エ 共同相続人の一人から遺産である特定の不動産についての共有持分を譲り受けた第三者が共有関係を解消しようとする場合において,他の共同相続人との間で協議が調わないときは,遺産の分割ではなく,共有物の分割を裁判所に請求する必要がある。

オ 被保佐人である共同相続人の一人が保佐人の同意を得ることなく協議で遺産の分割をしたときでも,保佐人は,その遺産の分割が保佐人の同意なくされたことを理由としてこれを取り消すことができない。

問23

相続人の不存在に関する次の 1 から 4 までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものは,どれか。

問24

文書偽造の罪に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 密入国者Aが,法務大臣から再入国許可を受けるために,他人であるB名義でその承諾なく再入国許可申請書を作成した。この場合において,Aが長年自己の氏名としてBの氏名を公然使用し,Bの氏名が相当広範囲にAを指称する名称として定着していたときは,Aには,私文書偽造罪は成立しない。

イ Aは,自己の氏名が弁護士Bと同姓同名であることを利用して,行使の目的で,弁護士の肩書を自己の氏名に付して弁護士業務の報酬として金銭を受領した旨の領収証を作成した。この場合,Aには,私文書偽造罪が成立する。

ウ Aが,偽造に係る運転免許証をポケット内に携帯して自動車を運転したにすぎない場合であっても,Aには,偽造公文書行使罪が成立する。

エ 学校法人Bを代表する資格がないAは,行使の目的で,その代表資格を偽り,Bを代表する資格がある者として自己の氏名を表示して契約書を作成した。この場合,Aには,B名義の文書を偽造した私文書偽造罪が成立する。

オ Aは,就職活動に使用するため,履歴書に虚偽の氏名,生年月日,経歴等を記載したが,これに自己の顔写真を貼付しており,その文書から生ずる責任を免れようとする意思は有していなかった。この場合,Aには,私文書偽造罪は成立しない。

問25

自首に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aは,窃盗により逮捕された際に,取調官Bが余罪の嫌疑を持ってAの取調べを行ったことが契機となって,反省悔悟し,その余罪についても供述した。この余罪については,Aには,自首は成立しない。

イ Aは,Bの財物を窃取したが,その後,警察に自首した。この場合,Aの窃盗罪の刑は任意的減軽又は免除の対象となる。

ウ Aは,Bを殺害した後に逃走した。警察は,捜査の結果Aがその犯人であることを把握したものの,Aの所在を全く把握することができなかった。Aは,犯行から 10 年経過後,反省悔悟し,警察に出頭して,自己の犯罪事実を自発的に申告した。この場合,Aには,自首は成立しない。

エ Aは,生活保護費を詐取していたが,その後,区役所の担当職員Bに対し,生活保護費を詐取していた事実を申告し,自らの処置を委ねた。この場合,Aには,自首が成立する。

オ Aは,路上でBを殺害したが,そこには多数の目撃者がいた。Aは,逃げられないと観念し,警察署に出頭し,自己の犯罪事実を自発的に申告したが,たまたまその時点で警察はAがその殺人事件の犯人であることを把握していなかった。この場合,Aには,自首は成立しない。

問26

人の生命・身体に対する罪に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aは,殺意をもって,出産の際に母体からその頭部が露出した胎児を攻撃し死亡させた。この場合,Aには,殺人罪は成立しない。

イ Aは,後追い自殺する意思がないのに,交際相手であったBを騙してAが後追い自殺をするものと誤信させ,Bに自殺させた。この場合,Aには,自殺関与罪が成立するが,殺人罪は成立しない。

ウ Aは,Bに暴行・脅迫を加えて監禁し,その暴行・脅迫によりBに外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせた。この場合,Aには,監禁致傷罪が成立する。

エ Aは,Bの言動に腹を立ててその胸を強く突いたが,Bに怪我を負わせてもよいなどとは思っていなかった。しかし,Bは,Aのその行為により足を滑らせて転倒して頭部打撲の傷害を負った。この場合,Aには,暴行罪のみが成立する。

オ Aは,狩猟免許を受けて娯楽のために繰り返し猟銃を用いて狩猟を行っていたものであるが,狩猟中に,過失により人を猟銃で撃ち怪我を負わせた。この場合,Aには,業務上過失致傷罪が成立する。

問27

株式会社の設立に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 募集設立の場合において,株式会社の成立後,定款に記載された設立に際して出資される財産の最低額に相当する出資がなかったことを原因として当該株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,発起人は,設立時募集株式の引受人に対し,連帯して,払込金を返還する責任を負う。

イ 発起設立の場合において,現物出資の目的財産である甲土地について定款に記載された価額が 2000 万円であって,財産引受けの目的財産である乙建物について定款に記載された価額が 400 万円であるときは,甲土地について定款に記載された価額が相当であることについて,監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けたときであっても,発起人は,乙建物に関する定款の記載事項を調査させるため,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをしなければならない。

ウ 募集設立の場合において,設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその期間の初日のうち最も早い日以後に,定款で定められた発行可能株式総数についての定款の変更をするときは,発起人及び設立時募集株式の引受人の全員の同意によらなければならない。

エ 発起設立の場合において,発起人は,株式会社の成立前に,払込みの取扱いをした銀行から払込金の返還を受け,返還を受けた払込金をもって株式会社の設立の登記の登録免許税を支払うことができる。

オ 発起設立の場合において,設立時発行株式 1 株のみを引き受けた発起人が,出資の履行をせず,設立時発行株式の株主となる権利を失ったときであっても,他の発起人が引き受けた設立時発行株式につき出資した財産の価額が定款に記載された設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を満たしているときは,株式会社の設立の無効事由とはならない。

問28

譲渡による株式の取得について取締役会の承認を要する旨の定款の定めを設けている取締役会設置会社における株式の取得に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 相続により譲渡制限株式を取得した者は,株式会社に対し,当該譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かを決定することを請求し,その承認を受けない限り,当該株式会社に対し,株主の地位を主張することができない。

イ 株主が譲渡制限株式を株式会社の株主でない者に対して譲渡した場合において,当該譲渡制限株式の譲渡人以外の株主全員が当該譲渡を承認していたときは,当該譲渡は,取締役会の承認がないときであっても,当該株式会社に対する関係においても有効である。

ウ 株券が発行されている譲渡制限株式を取得した者は,株式会社に対し,当該株券を提示して,当該譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かを決定することを単独で請求することができる。

エ 取締役会が譲渡制限株式の取得について承認をしない旨の決定をし,株式会社が当該譲渡制限株式を買い取らなければならないときは,当該譲渡制限株式を買い取る旨及び当該株式会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を取締役会の決議によって定めなければならない。

オ 株式会社が,譲渡制限株式の取得について承認をしない旨の決定をした場合において,当該譲渡制限株式を買い取る旨及び当該株式会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を決定したときは,当該株式会社は,譲渡等承認請求者に対し,これらの事項を通知した上で,当該譲渡等承認請求者と当該譲渡制限株式の売買価格についての協議が調わないときは, 1 株当たり純資産額に当該株式会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を乗じて得た額を供託所に供託しなければならない。

問29

新株予約権(譲渡制限新株予約権を除く。)に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 株式会社は,その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは,募集新株予約権の内容として,その行使に際して出資を要しない旨を定めることができない。

イ 会社法上の公開会社において,募集新株予約権の行使に際して出資される財産の価額が当該募集新株予約権を引き受ける者に特に有利な金額である場合には,当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は,株主総会の特別決議によらなければならない。

ウ 二以上の者の共有に属する新株予約権についての権利を行使する者の指定及び株式会社に対する通知を欠く場合において,当該新株予約権の共有者が当該権利を行使することに株式会社が同意していないときであっても,当該共有者は,新株予約権原簿の名義書換請求をすることができる。

エ 募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結して当該募集新株予約権が発行された場合において,当該募集新株予約権の発行が法令又は定款に違反し,株主が不利益を受けるおそれがあるときは,株主は,当該募集新株予約権の新株予約権者に対し,会社法上,当該募集新株予約権の行使をやめることを請求することができる。

オ 新株予約権付社債については,当該新株予約権付社債についての社債が消滅した場合を除き,当該新株予約権付社債に付された新株予約権のみを譲渡することはできない。

問30

次の対話は,株式会社と取締役との間の取引に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

教授: 取締役会設置会社が取締役から負担のない贈与を受けることについては,当該取締役会設置会社と取締役との間の取引として取締役会の承認が必要ですか。

学生:ア 取締役会の承認は必要ありません。

教授: それでは,特別取締役による議決の定めがある場合には,取締役会設置会社が取締役から利息付きで多額の借財をすることについては,特別取締役による議決のみをもって行うことができますか。

学生:イ その場合には,多額の借財についての取締役会の決定及び当該取締役会設置会社と取締役との間の取引についての取締役会の承認のいずれについても,特
別取締役による議決をもって行うことができます。

教授: 次に,監査等委員会設置会社以外の取締役会設置会社が取締役に対して金銭を貸し付けた場合において,自己のために貸付けを受けた取締役が約定に違反して弁済をせず,当該取締役会設置会社に損害が生じたときは,当該取締役の会社法上の責任については,どのような規律がありますか。

学生:ウ 当該貸付けにつき取締役会の承認を受けたか否かにかかわらず,当該取締役は,その任務を怠ったものと推定され,当該取締役の会社法第 423 条第 1 項の責任は,任務を怠ったことが当該取締役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができないこととされています。

教授: 仮に,自己のために取締役会設置会社から貸付けを受けた取締役が当該貸付けにつき会社法第 423 条第 1 項の責任を負う場合において,株主による当該責任の免除については,どのような規律がありますか。なお,当該取締役会設置会社には,最終完全親会社等がないものとします。

学生:エ 当該責任については,株主総会の決議又は総株主の同意によっても免除することができないこととされています。

教授: 最後に,指名委員会等設置会社以外の取締役会設置会社が取締役に対して金銭を貸し付けた後にとらなければならない手続については,どのような規律がありますか。

学生:オ 当該貸付けにつき取締役会の承認を受けたか否かにかかわらず,当該取締役会設置会社を代表した取締役及び当該貸付けを受けた取締役は,その取引後,遅滞なく,その取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。

(参考)
会社法
第 423 条 取締役,会計参与,監査役,執行役又は会計監査人(以下この節におい
て「役員等」という。)は,その任務を怠ったときは,株式会社に対し,これによっ
て生じた損害を賠償する責任を負う。
2 〜 4  (略)

問31

 監査役設置会社(清算株式会社を除く。以下同じ。)の監査役に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 監査役は,会計参与設置会社にあっては,取締役及び会計参与の職務の執行を監査する。

イ 取締役は,監査役会設置会社以外の監査役設置会社において,監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには,監査役が二人以上ある場合にあっては,その全員の同意を得なければならない。

ウ 監査役会設置会社において,会計監査人が職務上の義務に違反し,又は職務を怠ったときは,監査役会によるその会計監査人の解任は,監査役の全員の同意によって行わなければならない。

エ 監査役会を招集する監査役を定款又は監査役会で定めたときは,その監査役以外の監査役は,監査役会を招集することができない。

オ 監査役設置会社が会計監査人であった者に対し訴えを提起する場合には,その訴えについては,監査役がその監査役設置会社を代表する。

問32

持分会社に関する次の 1 から 4 までの記述のうち,正しいものは,どれか。

問33

社債管理者に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1から 5 までのうち,どれか。

ア 社債管理者は,社債権者が,社債権者集会の決議によって社債管理者を定め,社債の管理を行うことを委託することによって設置される。

イ 各社債の金額が 1 億円以上である場合には,社債管理者を設置することを要しない。

ウ 社債管理者は,社債権者集会の決議によらなければ,社債の償還の請求をすることができない。

エ 社債の管理を行うことの委託に係る契約においては,社債管理者が社債権者に対し善良な管理者の注意をもって社債の管理を行う義務を負わないものとすることができる。

オ 銀行は,社債発行会社に対して貸付債権を有している場合であっても,社債管理者となることができる。

問34

吸収合併に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1 から 4 までのうち,どれか。

ア 吸収合併存続株式会社が株主総会の決議によって吸収合併契約の承認を受けなければならない場合において,承継する吸収合併消滅株式会社の資産に吸収合併存続株式会社の株式が含まれるときは,吸収合併存続株式会社の取締役は,その承認を受ける株主総会において,当該株式に関する事項を説明しなければならない。

イ 吸収合併存続株式会社が吸収合併消滅株式会社の特別支配会社である場合であっても,吸収合併消滅株式会社の反対株主は,吸収合併消滅株式会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

ウ 吸収合併存続株式会社が種類株式発行会社である場合において,吸収合併消滅株式会社の株主に対して合併対価として吸収合併存続株式会社の譲渡制限種類株式が割り当てられるときは,当該譲渡制限種類株式を引き受ける者の募集について当該譲渡制限種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがあるときであっても,吸収合併存続株式会社において,当該譲渡制限種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する。

エ 吸収合併存続株式会社の甲種種類株式と乙種種類株式の価値が等しい場合には,吸収合併消滅株式会社の株主Aに対して甲種種類株式 1 株を,吸収合併消滅株式会社の株主Bに対して乙種種類株式 1 株を,それぞれ交付するという吸収合併契約における合併対価の割当てに関する事項についての定めをすることができる。

オ 吸収合併消滅株式会社の代表取締役が効力発生日後吸収合併の登記の前に第三者に対し吸収合併消滅株式会社が所有していた不動産を譲渡した場合には,吸収合併存続株式会社が吸収合併により当該不動産を取得したことは,当該第三者が悪意であるときであっても,当該第三者に対抗することができない。

問35

客から寄託を受けた物品が滅失し,又は客が特に寄託していない物品が滅失した場合に,客の来集を目的とする場屋の主人が負う商法上の損害賠償の責任(以下「場屋の主人の責任」という。)に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 場屋の主人は,客から寄託を受けた物品(貨幣,有価証券その他の高価品を除く。)の滅失については,不可抗力によるものであったことを証明しなければ,場屋の主人の責任を免れることができない。

イ 場屋の主人は,客が特に寄託していない物品であっても,場屋の中に携帯した物品(貨幣,有価証券その他の高価品を除く。)が,場屋の主人の使用人の不注意によって滅失したときは,場屋の主人の責任を負う。

ウ 場屋の主人は,客から寄託を受けた物品が滅失した場合であっても,客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を告示していたときは,場屋の主人の責任を免れることができる。

エ 場屋の主人は,貨幣,有価証券その他の高価品については,その物品が滅失した場合であっても,客がその種類及び価額を明告してこれを場屋の主人に寄託したときを除き,場屋の主人の責任を負わない。

オ 場屋の主人の責任は,客から寄託を受けた物品が滅失した時から 1 年を経過したときは,時効によって消滅する。

問36

訴訟の承継に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 貸金返還請求訴訟の係属中に原告の死亡によって訴訟手続が中断した場合においても,その相続人は,相続の放棄をすることができる間は,当該訴訟手続を受け継ぐことができない。

イ 訴訟引受けの申立ては,上告審においてもすることができる。

ウ 所有権に基づく動産引渡請求訴訟の係属中に被告である占有者が当該動産を第三者に売却し引き渡した場合において,裁判所が当該第三者に当該訴訟を引き受けさせる決定をしたときは,当該第三者は,当該決定に対し,抗告をすることができる。

エ 貸金返還請求訴訟の係属中に訴訟物とされている貸金債権が譲渡された場合において,当該貸金債権の譲受人が参加承継をしたときは,その参加は,その申出をした時に時効の中断の効力を生ずる。

オ 貸金返還請求訴訟の係属中に訴訟物とされている貸金債権が譲渡された場合において,当該貸金債権の譲受人が参加承継をしたときは,参加前の原告は,相手方の承諾を得て当該訴訟から脱退することができる。

問37

確認の訴えに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えは,確認の利益を欠く。

イ 共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは,確認の利益を欠く。

ウ 金銭消費貸借契約の債務者が,債権者に対し,その債務を弁済した事実自体の確認を求める訴えは,確認の利益を欠く。

エ 債務の不存在の確認を求める本訴に対して当該債務の履行を求める反訴が提起された場合には,当該債務の不存在の確認を求める訴えは,確認の利益を欠く。

オ 建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在の確認を求める訴えは,賃貸人が賃借人の敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないと主張している場合であっても,確認の利益を欠く。

問38

文書の証拠調べに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 書証として提出された公文書の成立の真否について疑いがあるときは,裁判所は,職権で,当該官庁又は公署に照会をすることができる。

イ 書証として提出された私文書は,その作成者とされた本人の署名がある場合であっても,その押印がないときは,真正に成立したものと推定されない。

ウ 訴訟の当事者は,他の訴訟において行われた証人尋問の口頭弁論調書について,書証の申出をすることができる。

エ 裁判所は,文書提出命令の申立てに係る文書の一部に提出の義務があると認めることができない部分がある場合には,その部分以外の部分につき当該申立てを理由があると認めるときであっても,当該申立ての全部を却下しなければならない。

オ 第三者に対してされた文書提出命令に対し,当該文書提出命令の申立人ではない本案事件の当事者は,即時抗告をすることができる。

問39

簡易裁判所の訴訟手続に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。
なお,少額訴訟に関する特則については,考慮しないものとする。

ア 簡易裁判所は,訴訟がその管轄に属する場合においても,相当と認めるときは,申立てにより又は職権で,訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。

イ 反訴の提起は,口頭ですることができない。

ウ 証拠調べは,即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。

エ 判決書に事実及び理由を記載するには,請求の趣旨及び原因の要旨,その原因の有無並びに請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。

オ 裁判所は,当事者の共同の申立てがあるときは,司法委員を審理に立ち会わせて事件についてその意見を聴かなければならない。

問40

再審に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触することを再審事由とする場合には,再審期間の制限がある。

イ 再審の訴えを提起した当事者は,不服の理由を変更することができる。

ウ 裁判所は,決定で再審の請求を棄却する場合には,相手方を審尋しなければならない。

エ 確定した訴状却下命令に対しては,再審の申立てをすることができる。

オ 裁判所は,再審開始の決定が確定した場合において,判決を正当とするときは,再審の請求を却下しなければならない。

問41

民事保全に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 か
ら 4 までのうち,どれか。
ア 貸金債権を被保全債権とする仮差押命令は,本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえ
るべき物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
イ 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に係争物を占有した者は,その執行がされたこ
とを知って占有したものとみなされる。
ウ 保全命令は,保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の疎明がない場合
であっても,これらに代わる担保を立てさせて発することができる。
エ 保全執行は,申立てにより又は職権で,裁判所又は執行官が行う。
オ 保全執行は,保全命令が債務者に送達される前であっても,これをすることができ
る。

問42

執行文に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から4 までのうち,どれか。

ア 執行証書についての執行文は,その原本を保存する公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所の裁判所書記官が付与する。

イ 請求が確定期限の到来に係る場合においては,執行文は,その期限の到来後に限り,付与することができる。

ウ 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては,執行文は,債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り,付与することができる。

エ 執行文は,債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき,又はこれが滅失したときに限り,更に付与することができる。

オ 執行文の付与の申立てに関する処分に対しては,異議の申立てをすることができない。

問43

司法書士又は司法書士法人(社員のうちに,簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士はいないものとする。)の業務に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 司法書士法人の社員は,他の社員全員の承諾があれば,自己又は第三者のためにその司法書士法人の業務の範囲に属する業務を行うことができる。

イ 司法書士Aは,司法書士法人Bの社員である期間内に,BがCから依頼を受けた相手方をDとする売買代金支払請求事件の訴状を作成する業務に自らが関与していたときは,Bを脱退した後であっても,当該事件についてDから依頼を受けて答弁書を作成することはできない。

ウ 司法書士法人は,定款で定めるところにより,当該法人が行う業務についての執行権を有する者を当該法人の社員のうちの一部の者のみに限定することができる。

エ 司法書士法人Aの社員である司法書士Bが,Aが受任した登記手続の代理業務を遂行するに当たり司法書士法に違反する行為を行った場合には,当該行為を行ったBが懲戒処分を受けることはあるが,Aが重ねて懲戒処分を受けることはない。

オ 司法書士法人は,定款で定めるところにより,当事者その他関係人の依頼により,管財人,管理人その他これらに類する地位に就き,他人の財産の管理又は処分を行う業務をすることができる。

問44

供託の申請手続に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 供託書に記載した供託金額については,訂正,加入又は削除をしてはならない。

イ 法人が金銭又は有価証券の供託をするときは,供託書には,当該法人の名称,主たる事務所及び代表者の氏名を記載しなければならない。

ウ 継続的給付に係る金銭の供託をするために供託カードの交付を受けた者が,当該供託カードを提示して,当該継続的給付について供託をしようとするときは,供託書(OCR用)に記載する供託の原因たる事実については,当該供託カードの交付の申出をした際に供託書に記載した事項と同一でない事項のみを記載すれば足りる。

エ 供託書(OCR用)が二葉以上にわたるときは,作成者は,毎葉のつづり目に契印をしなければならない。

オ 同一の供託所に対して同時に数個の供託をするときは,各供託書に添付すべき書類が同一であっても,各供託書ごとに当該書類を添付しなければならない。

問45

弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 指名債権がA及びBに二重に譲渡され,確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達した場合には,債務者は,A又はBを被供託者として債権者不確知を原因とする供託をすることができる。

イ 譲渡禁止の特約のある指名債権について転付命令が確定した場合において,差押債権者が当該特約の存在について善意無重過失であるかどうかを第三債務者が知ることができないときは,第三債務者は,差押債権者又は執行債務者を被供託者として債権者不確知を原因とする供託をすることができる。

ウ 建物賃貸借契約の賃貸人が死亡した場合において,その相続人の有無が賃借人に不明であるときは,賃借人は,戸籍により賃貸人の相続人の有無を調査しなくても,債権者不確知を原因とする賃料の供託をすることができる。

エ 建物賃貸借契約の賃借人が賃貸人から建物明渡請求訴訟を提起されるとともに,今後は賃料を受領しない旨をあらかじめ告げられた場合には,賃借人は,その後に弁済期の到来した賃料について,現実の提供又は口頭の提供をすることなく供託をすることができる。

オ 金銭消費貸借契約の借主は,弁済期の到来前であっても,貸主に貸金の元本及び弁済期までの利息を提供してその受領を拒まれた場合には,当該貸金の元本及び弁済期までの利息を供託することができる。

問46

担保(保証)供託に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 民事訴訟における当事者が供託する方法により仮執行免脱の担保を立てる場合には,当事者が特別の契約をしたときを除き,裁判所が相当と認める有価証券を供託物とすることができる。

イ 民事訴訟における被告が訴訟費用の担保として供託された金銭の払渡しを受けるには,裁判所の配当手続によらなければならない。

ウ 営業保証供託については,担保官庁の承認があれば,営業主以外の第三者が供託者となることができる。

エ 営業保証供託の供託者は,供託金全額の払渡しと同時又はその後でなければ,その供託金利息の払渡請求をすることができない。

オ 営業保証金として供託した供託金の保管替えが法令の規定により認められる場合であっても,供託金の取戻請求権に対する差押えがされているときは,供託者は,その供託金の保管替えを請求することができない。

問47

次のアからオまでの登記のうち,登記をすることができないものの組合せは,後記 1から 4 までのうち,どれか。

ア 内縁関係を解消した一方当事者が他方当事者に対して財産分与を原因とする土地の所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決の正本を提供して申請する,財産分与を登記原因とする当該所有権の移転の登記

イ 所有権の登記名義人及び買戻権の登記名義人が共同して申請する,土地の買主である当該所有権の登記名義人が一括で支払った売買代金の総額を増額する旨の買戻権の変更の登記

ウ 工場財団の所有権の登記名義人及び当該工場財団の賃借人が共同して申請する,当該工場財団を目的とする賃借権の設定請求権保全の仮登記

エ 抵当権の設定契約と同時に締結した工事請負契約に基づく請負代金債権を被担保債権として当該工事請負契約の注文者及び請負人が共同して申請する,当該注文者が所有権の登記名義人である土地の所有権を目的とする抵当権の設定の登記

オ 土地の所有権の割合的な一部についての移転の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分に基づき裁判所書記官が嘱託する,当該所有権の割合的な一部についての処分禁止の仮処分の登記

問48

次のアからオまでの記述のうち,甲土地を目的として第 1 欄の各登記を申請又は嘱託したときに第 2 欄に掲げる事項が当該各登記の登記事項とはならないものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。


第1欄: 仮処分債権者が所有権の移転の登記と同時に申請する,所有権の処分禁止の仮処分の登記に後れる所有権の移転の登記の抹消
第2欄: 登記原因の日付


第1欄: 被相続人名義の共有持分について,他の共有持分の登記名義人の一人と住所を同じくする同名異人である相続人が,その生年月日を申請情報の内容として申請する相続を登記原因とする当該持分の全部の移転の登記
第2欄: 同名異人である相続人の生年月日


第1欄: 賃借権の登記名義人の相続人が二人以上いる場合において,当該相続人らが申請する相続を登記原因とする賃借権の移転の登記
第2欄: 相続人ごとの持分


第1欄: 相続財産管理人が申請する相続人不存在を登記原因とする所有権の登記名義人の氏名の変更の登記
第2欄: 相続財産管理人の氏名


第1欄: 国が所有権の登記名義人に代位して嘱託する住所移転を登記原因とする当該登記名義人の住所の変更の登記
第2欄: 代位原因

問49

電子情報処理組織を使用する方法により不動産登記の申請をする場合に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。
なお,不動産登記令附則第 5 条に規定する添付情報の提供方法に関する特例(特例方式)については,考慮しないものとする。

ア 所有権の移転の登記の申請情報の内容に誤記がある場合において,登記官が定めた相当の期間内に申請人が当該誤記を補正するときは,当該補正に係る書面を登記所に提出する方法によってすることができる。

イ 登記義務者が登記識別情報を提供することができないため申請代理人である司法書士が作成した本人確認情報を提供して申請をするときは,当該申請代理人が司法書士であることを証する情報を提供しなければならない。

ウ 共同担保としての根抵当権の追加設定の登記の申請の添付情報として不動産の登記事項証明書を提供しなければならない場合において,当該不動産に係る不動産番号を申請情報の内容としたときは,当該登記事項証明書の提供を省略することができる。

エ 登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた申請代理人である司法書士が申請をする場合において,送付の方法による登記識別情報を記載した書面の交付を希望するときは,当該申請代理人の住所を送付先とすることができる。

オ 申請人が同一の登記所に対して同時に二以上の申請をする場合において,各申請に共通する添付情報を一の申請の申請情報と併せて提供するときは,当該添付情報を当該一の申請の申請情報と併せて提供した旨を他の申請の申請情報の内容としなければならない。

問50

代位による登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを債務者,Cを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている場合には,Cは,単独で,Aを代位して,Bが住所を移転したことによる抵当権の変更の登記を申請することができる。

イ 買戻しの特約の付記登記がされているAからBへの所有権の移転の登記及びCを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている甲土地について,当該抵当権の担保不動産競売開始決定に基づく差押えの登記がされている場合には,Cは,Bに代位して,Aと共同して買戻しの特約の登記の抹消を申請することができる。

ウ 受託者Aが信託財産である金銭をもってBから甲土地を買い受け,甲土地が信託財産に属することとなったにもかかわらず,甲土地について売買を原因とする所有権の移転の登記のみを申請し,信託の登記を申請しない場合には,委託者Cは,Aに代位して,Bと共同して信託財産の処分による信託の登記を申請することができる。

エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記がされている場合において,AのBに対する元本の確定請求によって元本が確定した後,Cが当該根抵当権の被担保債権を代位弁済したときは,Cは,単独で,Bに代位して,元本の確定の登記を申請することができる。

オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている場合において,Aの債権者であるC及びDが詐害行為取消しによる当該抵当権の設定の登記の抹消を求める訴えを提起し,Cについてその請求を認容する判決が確定したときは,Dについて当該訴えに係る訴訟が係属中であっても,Cは,単独で,Aに代位して,当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。

問51

次のアからオまでの記述のうち,書面申請による第 1 欄の登記の申請を却下するに当たって,第 2 欄に掲げる却下の事由が正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。


【第1欄】利息制限法違反の利息の定めを登記事項とする抵当権の設定の登記
【第2欄】申請が登記事項以外の事項の登記を目的とするとき


【第1欄】インクを消すことができるボールペンで記載された手書きの申請情報を提供してする根抵当権の設定の登記
【第2欄】申請情報又はその提供の方法が不動産登記法に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき


【第1欄】所有権の登記名義人の印鑑に関する証明書を提供しないでする,所有権の保存の登記の抹消
【第2欄】申請の権限を有しない者の申請によるとき


【第1欄】民法上の組合を登記名義人とする賃借権の設定の登記
【第2欄】申請に係る登記をすることによって登記名義人となる者が権利能力を有しないとき


【第1欄】相続による根抵当権の債務者の変更の登記をしないでする,民法第 398 条の8 第 2 項の合意の登記
【第2欄】申請に係る登記の目的である権利が同一の不動産について既にされた登記の目的である権利と矛盾するとき

(参考)
民法
第 398 条の 8  (略)
2  元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは,根抵当権は,相続開始の時に存する債務のほか,根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3 ・ 4  (略)

問52

登記記録に次のような記録(抜粋)がある甲土地について,次のアからオまでの記述のうち,第 1 欄の申請人が第 2 欄の登記を書面により申請した場合において,第 2 欄の登記の完了後に登記所が交付した第 3 欄の登記識別情報を記載した書面(以下「登記識別情報通知書」という。)及び登記完了証の通数が正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。
なお,第 1 欄の申請人は,第 2 欄の登記を申請するに当たって,第 3 欄の書面の交付に関する申出をしていないものとする。

◆権利部(甲区)(所有権に関する事項)
【順位番号】2
【登記の目的】所有権移転
【受付年月日・受付番号】平成30年2月1日 第2000号
【権利者その他の事項】
  原因 平成30年2月1日売買
  共有者
  持分 3 分の 2  A
  3 分の 1    B

◆権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)
【順位番号】1
【登記の目的】抵当権設定
【受付年月日・受付番号】平成30年2月1日 第2001号
【権利者その他の事項】
  原因 平成30年2月1日金銭消費貸借
  同日設定
  債権額 金 500 万円
  利息 年 3 %
  債務者  A
  抵当権者 C


【第1欄】A及びB
【第2欄】錯誤を登記原因とする,A及びBの持分をそれぞれ 2 分の 1 ずつとする所有権の更正の登記
【第3欄】
  登記識別情報通知書 不交付
  登記完了証      1 通


【第1欄】A,B及び受託者D
【第2欄】信託を登記原因とする共有者全員持分全部移転の登記及び信託の登記
【第3欄】
  登記識別情報通知書  1 通
  登記完了証      2 通

【第1欄】第三者E
【第2欄】贈与を登記原因としてAの持分の全部の移転の登記手続を求める確定判決に基づき申請する当該持分全部移転の登記
【第3欄】
  登記識別情報通知書  1 通
  登記完了証      2 通


【第1欄】Cの法定相続人であるF及びG
【第2欄】相続を登記原因とする抵当権の移転の登記
【第3欄】
  登記識別情報通知書  1 通
  登記完了証      2 通


【第1欄】A,B及びC
【第2欄】弁済を登記原因とする抵当権の登記の抹消
【第3欄】
  登記識別情報通知書 不交付
  登記完了証      2 通

問53

書面による申請又は嘱託における印鑑に関する証明書の添付に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 不動産の共有者である所有権の登記名義人の全員が 3 年間共有物の分割を禁止する旨の定めをし,当該定めを追加する旨の所有権の変更の登記を申請するときは,当該登記名義人の全員の印鑑に関する証明書を添付することを要しない。

イ 地上権の設定請求権の仮登記の登記名義人の承諾を証する書面を添付して,当該仮登記の登記上の利害関係人が単独で当該仮登記の抹消の登記を申請するときは,当該仮登記の登記名義人の印鑑に関する証明書を添付することを要しない。

ウ 雇用契約における使用者が所有権の登記名義人である不動産について,労働者の当該使用者に対する退職金債権を被担保債権とする一般の先取特権の保存の登記を申請するときは,当該使用者の印鑑に関する証明書を添付することを要しない。

エ 自己信託の登記がされた不動産について,当該自己信託に係る信託行為の定めに基づき信託が終了したことにより当該不動産が委託者の固有財産となった旨の登記を申請するときは,受託者の印鑑に関する証明書を添付することを要しない。

オ 税金の滞納者が所有権の登記名義人である不動産について,税務署が公売処分による当該不動産の所有権の移転の登記を嘱託するときは,その嘱託情報に記名押印した者に係る印鑑に関する証明書を添付することを要しない。

問54

登記識別情報の提供に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Aの破産管財人Bが,破産財団に属する甲土地を裁判所の許可を得て売却し,その所有権の移転の登記を申請するときは,Aに対して通知された登記識別情報を提供することを要する。

イ 甲土地について,甲区 1 番でAを登記名義人とする所有権の保存の登記がされた後に,甲区 1 番付記 1 号でA及びBの共有名義とする更正の登記がされている場合において,A及びBを設定者とする抵当権の設定の登記を申請するときは,甲区 1 番及び甲区 1 番付記 1 号で通知された登記識別情報を提供することを要する。

ウ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Aとその配偶者Bが離婚した後,AからBへの財産分与を登記原因とする所有権の移転の登記を申請する旨の公正証書が作成された場合において,当該公正証書を登記原因証明情報として,AからBへの所有権の移転の登記を申請するときは,Aに対して通知された登記識別情報を提供す
ることを要しない。

エ Aが甲区 2 番及び甲区 3 番でそれぞれ所有権の持分を 2 分の 1 ずつ取得し,Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,甲区 2 番で登記された持分のみを目的とする抵当権の設定の登記を申請するときは,甲区 3 番の持分を取得したときに通知された登記識別情報を提供することを要しない。

オ 甲土地について,Aを抵当権者とする順位 1 番の抵当権,Bを根抵当権者とする順位 2 番の根抵当権,Cを抵当権者とする順位 3 番の抵当権の設定の登記がそれぞれされている場合において,Cの抵当権を順位 1 番,Aの抵当権を順位 3 番とする順位の変更の登記を申請するときは,Bに対して通知された登記識別情報を提供することを要しない。

問55

所有権の保存の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア A及びBが表題部所有者である所有権の登記のない不動産について,Aの死亡によりCが,Bの死亡によりDが,それぞれ相続人となったときは,Cは,単独で,C及び亡Bを登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。

イ 所有権の登記のない不動産について,その表題部所有者であるAが死亡した場合には,Aから死因贈与を受けた社会福祉法人Bは,社会福祉法人Bを登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。

ウ 表題登記のない建物について,Aが,当該建物の所有権を有することを確認する旨の確定判決に基づいて,当該建物の表題登記の申請をすることなくAを登記名義人とする所有権の保存の登記の申請をする場合には,当該建物の建物図面及び各階平面図
を提供しなければならない。

エ 所有権の登記のない不動産について,その表題部所有者であるAが死亡する前にAがBに対して当該不動産を売却していた場合,Aの相続人は,亡Aを登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。

オ 所有権の登記のない不動産について,その表題部所有者A及びBの持分について変更があった場合には,表題部所有者の持分の更正の登記を申請することなく,当該変更後のA及びBの持分で,A及びBを登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。

問56

甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡した場合において,Aに配偶者B並びに子C及びDがいるときにおける登記の申請に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 甲土地について,抵当権者Eの代位によりAからB,C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされたが,その前にB,C及びDの全員がAに係る相続の放棄をする旨の申述を受理する審判がされていた場合には,Eは,単独で,B,C及びDに代位して,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。

イ Aの遺産に関する遺産分割の調停調書に「Cが甲土地を取得する代償として,Cは,Bに対して,Cの所有する乙建物を譲渡する」旨の条項があるときは,B及びCは,当該調停調書の正本を提供して,乙建物について,遺産分割による代償譲渡を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。

ウ Aの死亡後にB,C及びDから甲土地を買い受けたEが,B,C及びDからEへの売買を原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決に基づき,代位によって,AからB,C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記の申請をする場合において,当該確定判決の理由中にAの相続人がB,C及びDのみである旨の認定がされているときは,相続があったことを証する情報として当該確定判決の正本を提供すれば足りる。

エ B,C及びDが限定承認をする旨の申述を受理する審判がされ,Cが相続財産の管理人に選任されている場合において,Cが家庭裁判所の許可を得てEに対して甲土地を売却したときは,Cは,B及びDの委任がなくとも,その代理人として,売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。

オ 甲土地の地目及び現況が畑であり,かつ,AからB,C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合において,CがDに対して相続分を贈与し,当該相続分の贈与を登記原因としてCからDへの持分の移転の登記を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない。

問57

賃借権の登記の申請又は嘱託に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,公正証書によりBを借地権者とする事業用定期借地権を設定する契約がされたが,当該契約に基づく借地権の設定の登記がされないままAからCへ所有権の移転の登記がされている場合において,Cが当該契約を承認したことにより賃借権の設定の登記を申請するときは,AとBの当該契約の締結の日を登記原因の日付とすることができる。

イ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを賃借権者とする賃借権の設定の登記がされている場合において,Bが賃借権の一部をAに譲渡したときは,Aは,当該賃借権について混同を登記原因とする賃借権の登記の抹消を申請することができる。

ウ 甲土地及び乙土地について,賃借権の設定の登記を申請するときは,「甲土地,乙土地合計金何円」として 2 筆を合わせて定めた賃料を申請情報の内容とすることができる。

エ 不在者であるAを所有権の登記名義人とする甲土地について,Aのために不在者の財産管理人Bが選任されている場合において,Bを賃貸人,Cを賃借人とする賃借権の設定の登記を申請するときは,賃貸人が財産の処分の権限を有しない者である旨として「管理人Bの設定した賃借権」を申請情報の内容としなければならない。

オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを賃借権者とする賃借権の設定の登記に賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがあるときは,国は,当該賃借権を目的として滞納処分による差押えの登記を嘱託することができる。

問58

質権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 不動産の使用及び収益をしない旨の定めがない質権の設定の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行としての処分禁止の登記及び保全仮登記がされている場合には,当該保全仮登記に係る仮処分の債権者は,当該保全仮登記に基づく本登記の申請と同時に,当該処分禁止の登記に後れる地上権の設定の登記の抹消を単独で申請することができる。

イ 登記原因証明情報である質権設定契約書に被担保債権につきその債務不履行があった場合の違約金についての定めがあるときは,当該定めを質権の設定の登記の申請情報の内容として登記の申請をすることができる。

ウ 賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがある賃借権の設定の登記がされている場合において,当該賃借権を目的とする質権の設定の登記を申請するときは,賃貸人の承諾を証する情報を提供することを要する。

エ Aを所有権の登記名義人とする土地について,質物の保存の費用及び質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保しない旨の定めがある,Bを登記名義人とする質権の設定の登記がされている場合において,当該定めの廃止に係る質権の変更の登記を申請するときは,当該申請は,Aを登記権利者,Bを登記義務者としてしなければならない。

オ 利息に関する定め及び損害金に関する定めがいずれもないA株式会社を登記名義人とする質権の登記がされている土地について,不動産登記法第 70 条第 3 項後段の規定に基づき当該質権の登記の抹消を申請する場合には,被担保債権に加え,年 6 分の割合によるその利息及び損害金に相当する金銭をも供託したことを証する情報を提供することを要する。

(参考)
不動産登記法
第 70 条 登記権利者は,登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは,非訟事件手続法(平成 23 年法律第 51 号)第 99 条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
2  (略)
3  第 1 項に規定する場合において,登記権利者が先取特権,質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは,第 60 条の規定にかかわらず,当該登記権利者は,単独でそれらの権利に関
する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において,被担保債権の弁済期から 20 年を経過し,かつ,その期間を経過した後に当該被担保債権,その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも,同様とする。

問59

抵当権又は根抵当権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 抵当権の設定の登記がされている土地について,当該抵当権の登記名義人である株式会社A銀行の代表者Bは,抵当権設定者Cと共に,登記原因証明情報として,支配人の登記がされていない株式会社A銀行の支店長Dが作成した解除証書を提供して,当該抵当権の抹消の登記を申請することができる。

イ 乙区 1 番(あ)で登記された抵当権の登記名義人Aが,乙区 1 番(い)で登記された抵当権の登記名義人Bに対して抵当権の順位を譲渡したときは,A及びBは,共同して抵当権の順位の譲渡の登記を申請することができる。

ウ Aを根抵当権の登記名義人とする元本確定前の根抵当権についてBへの分割譲渡の登記を申請するときは,申請情報の内容として提供する極度額はBを根抵当権の登記名義人とする根抵当権の極度額で足りる。

エ 共同根抵当権の追加設定をする場合において,既に登記がされている根抵当権の債務者の住所について区制施行による変更があったときは,当該債務者の住所の変更の登記を申請することなく,共同根抵当権の追加設定の登記を申請することができる。

オ 共同根抵当権の設定の登記がされている甲土地及び乙土地について,極度額の変更による当該根抵当権の変更の登記の申請をする場合において,その極度額を変更する契約の締結日の翌日に甲土地の利害関係人が承諾し,更にその翌日に乙土地の利害関係人が承諾したときは,当該根抵当権の変更の登記の申請は,一の申請情報ですることができない。

問60

信託の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,抵当権の被担保債権をBのAに対する金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債権とし,Aを委託者,Cを受託者かつ抵当権者,Bを受益者とする抵当権の設定の登記及び信託の登記を申請することができる。

イ Aを受託者,Bを受益者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について,当該信託の登記の信託目録に記録された信託財産の管理方法に変更が生じた場合には,AとBとが共同で信託の変更の登記を申請しなければならない。

ウ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について,Aが不動産の売却をその信託の目的とする信託行為に基づき,甲土地をBに対して売却した場合において,AからBへの所有権の移転の登記及び信託の登記の抹消の
申請をするときは,信託財産の処分を信託の登記の抹消の登記原因としなければならない。

エ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について,Aが後見開始の審判を受けて受託者の任務が終了し,新たに受託者Bが選任された場合には,Aの成年後見人とBとが共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。

オ 甲土地について,受益者の定めのない信託として所有権の移転の登記及び信託の登記を申請する場合には,受益者の定めのない旨を信託目録に記録すべき情報として提供しなければならない。

問61

Aを所有権の登記名義人とする甲土地についての仮登記に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア AからBへの所有権の移転の仮登記がされている場合には,Bを設定者,Cを抵当権者とする抵当権設定請求権の保全の仮登記を申請することができる。

イ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後,BからCへの当該請求権の一部の移転の登記がされた場合には,当該仮登記に基づく本登記は,A及びCが共同して申請することができる。

ウ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後,Bが当該売買を完結する意思表示をしたことにより,当該仮登記に基づく本登記がされた場合において,Bの当該意思表示に錯誤があるときは,A及びBが共同して当該本登記の抹消を申請することができる。

エ AからBへの所有権の移転の仮登記がされた後,当該仮登記を目的としてCを仮処分の債権者とする所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされている場合において,当該仮登記に基づく本登記を申請するときは,Cの承諾を証する情報を提供しなければならない。

オ Bを抵当権者とする抵当権の設定の仮登記がされた後,AからCへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合には,当該仮登記に基づく本登記は,A及びBが共同して申請することができる。

問62

甲土地(不動産の価額 100 万円)について,次のアからオまでの記述のうち,第 1 欄の各登記の申請又は嘱託をする場合の登録免許税の額として,第 2 欄の金額が誤っているものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。
なお,租税特別措置法等の特例法による税の減免規定の適用はないものとし,また,当該申請又は嘱託は,登録免許税の額が最も低額となるように申請又は嘱託をするものとする。


【第1欄】Aを地上権者とする地上権の設定の登記がされた後,AからBに対して地上権の全部が贈与されていたにもかかわらず,Bの持分を 2 分の1 とするAからBへの贈与を登記原因とする地上権の一部移転の登記がされている場合における,Bのみを地上権の登記名義人とする地上権の更正の登記
【第2欄】5000円


【第1欄】債権額を金 500 万円とする抵当権の設定の登記がされている場合における,当該抵当権で担保されている債権が質入れされたときの債権の質入れの登記
【第2欄】1000円


【第1欄】所有権の登記名義人であるAから甲土地を買い受けた国が,Aに代位して嘱託する錯誤を登記原因とするAの住所の更正の登記
【第2欄】1000円


【第1欄】乙区 1 番に抵当権の設定の登記が,乙区 2 番に賃借権の設定の登記が,それぞれされている場合における 2 番賃借権の 1 番抵当権に優先する同意の登記
【第2欄】2000円


【第1欄】賃借権の登記名義人であるAが,所有権の登記名義人であるBから甲土地を買い受けた場合における,売買を登記原因とする所有権の移転の登記
【第2欄】2 万円

問63

商業登記における登記所への印鑑の提出に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 支配人を選任した商人(小商人及び会社である場合を除く。)が印鑑の提出をする場合には,印鑑届書に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後 3 月以内のものを添付しなければならない。

イ 株式会社の本店を他の登記所の管轄区域内に移転した旨の本店移転の登記の申請をする場合における新所在地を管轄する登記所にする印鑑の提出は,旧所在地を管轄する登記所を経由してすることを要しない。

ウ 印鑑の提出は,印鑑届書に代理人の権限を証する書面を添付して,代理人によりすることができる。

エ 外国会社の日本における代表者が外国人である場合には,その日本における代表者は,印鑑の提出に代えて,自己の署名を登記所に届け出なければならない。

オ オンライン登記申請をする場合には,印鑑届書の提出に代えて,印鑑の印影に係る情報を同時に送信することができる。

問64

株式会社の設立の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 当該設立が発起設立であり,発起人がA及びBのみである場合において,A及びBの同意により,各発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数を 10 株ずつとしつつ,これと引換えにAが払い込む金銭の額を 100 万円,Bが払い込む金銭の額を 50万円とそれぞれ定めたときは,その旨のA及びBの同意があったことを証する書面を添付しても,設立の登記を申請することはできない。

イ 当該設立が発起設立であり,発起人がA株式会社及びB株式会社のみである場合において,A株式会社及びB株式会社が両社の代表取締役を兼務するC名義の預金口座に出資に係る金銭を払い込んだときは,Cが設立する会社の設立時取締役でないとしても,各発起人がCに対して払込金の受領権限を委任したことを証する書面を添付して設立の登記を申請することができる。

ウ 当該設立が募集設立である場合において,公証人の認証を受けた定款について,発起人全員が監査役設置会社である旨の定めを追加する旨の同意をしたときは,改めて公証人の認証を受けなくとも,当該同意があったことを証する書面を添付して設立の登記を申請することができる。

エ 当該設立が募集設立であり,設立に際して普通株式のほか株主総会において議決権を行使することができないものと定められた種類株式を発行する場合において,発起人が創立総会の目的である会社の公告方法の変更について提案をし,当該提案につき普通株式の設立時株主の全員が書面により同意の意思表示をしたときは,創立総会の決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面を添付して設立の登記を申請することができる。

オ 法務大臣の公告後 2 か月以内に事業を廃止していない旨の届出をせず,職権で解散の登記がされた休眠会社と商号及び本店の所在場所を同一とする株式会社の設立の登記を申請することはできない。

問65

金銭以外の財産を出資の目的とする募集株式の発行による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 弁済期の到来した第三者に対する金銭債権を出資の目的とする場合において,会社が募集事項の決定の際に当該金銭債権の価額を 1000 万円と定めていたときは,その価額が相当であることについて当該会社の監査役である弁護士の証明を記載した書面及びその附属書類を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

イ 普通株式 2000 株のみを発行している会社が,その発行した償還期の到来していない社債を出資の目的とし,かつ,募集事項の決定の際に当該社債の価額を 800 万円と定めていた場合において,募集株式を引き受けようとする者が募集に係る普通株式200 株の総数の引受けを行う契約を締結したときは,検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付しなければ,募集株式の発行による変更の登記を申請することができない。

ウ 普通株式 2000 株のみを発行している会社が,製造機械を出資の目的とし,かつ,募集事項の決定の際に当該機械の価額を 500 万円と定めていた場合において,募集株式の引受人に対し新たにその発行する普通株式 200 株及び自己株式 50 株を割り当てるときは,検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類を添付しないで,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

エ 市場価格のある有価証券を出資の目的とし,かつ,会社が募集事項の決定の際に当該有価証券の価額を 900 万円と定めていた場合において,当該有価証券を当該会社に給付した日におけるその市場価格が 1000 万円であるときは,当該市場価格を証する書面を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

オ 不動産の賃借権を出資の目的とする場合において,会社が募集事項の決定の際に当該賃借権の価額を 2000 万円と定めていたときは,その価額が相当であることについて税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を記載した書面並びにその附属書類を添付して,募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

問66

種類株式の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 会社法上の公開会社でない会社が定款を変更して,「株主Aは,他の株主に交付する 1 株当たりの剰余金の配当額につき 15 % を付加した額にその有する株式の数に乗じて得た額の配当を受ける。」旨を定めたときは,発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定による変更の登記の申請をしなければならない。

イ 会社が取得請求権付株式の株主から請求を受け,数回にわたり,当該取得請求権付株式の取得と引換えに当該会社の他の種類の株式を発行した場合には,その都度,取得請求権付株式の取得と引換えにする株式の発行の登記の申請をしなければならない。

ウ 現にA種種類株式及びB種種類株式を発行している会社がA種種類株式につき株式の併合をした場合には,株式の併合による変更の登記の申請書には,登記すべき事項である発行済株式の種類及び種類ごとの数として,その数に変更のないB種種類株式に関する事項も記載しなければならない。

エ 現にA種種類株式及びB種種類株式を発行している会社がA種種類株式の内容を変更して取得条項付株式とした場合には,株式の内容の変更の登記の申請書には,A種種類株式を有する株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

オ 現にA種種類株式及びB種種類株式を発行し,B種種類株式につき譲渡により取得するためには会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている会社が,新たな種類の株式として,当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役を選任することができる種類株式についての定款の定めを設けた場合には,発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更の登記の申請をしなければならない。

問67

次のアからオまでの株式会社(特例有限会社を除く。)の登記のうち,解散の登記の日より後に生じた事由として登記の申請をすることができないものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 募集新株予約権の発行による変更の登記

イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの設定による変更の登記

ウ 定款に監査役の任期の定めがない場合における監査役の任期満了による退任の登記

エ 資本金の額の減少による変更の登記

オ 清算株式会社が吸収合併消滅株式会社となる吸収合併による変更の登記

問68

A社を吸収合併存続株式会社とし,B社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1から 4 までのうち,どれか。
なお,A社及びB社は,いずれも取締役会設置会社とする。

ア A社及びB社の合意によって吸収合併の効力発生日を変更した場合には,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,効力発生日の変更に係るA社及びB社の合意を証する書面並びに効力発生日の変更の決議をしたA社及びB社の取締役会の議事録を添付しなければならない。

イ 吸収合併に際してA社の資本金の額が増加せず,かつ,その効力の発生と同時にA社の商号を変更する場合において,A社の吸収合併による変更の登記と商号の変更の登記を一の申請書で申請するときは,登録免許税の額は 3 万円である。

ウ 吸収合併に際してB社の新株予約権者に対してA社の新株予約権を交付する場合には,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,合併契約書のほか,B社の新株予約権の内容として,吸収合併によりB社が消滅する際には吸収合併存続会社の新株予約権を交付する旨を定めたB社の株主総会の議事録又は取締役会の議事録を添付しなければならない。

エ B社が現に株券を発行している株券発行会社である場合において,B社がA社の完全子会社であるときは,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,B社が株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付することを要しない。

オ 会社法上の公開会社でないA社が,種類株式を発行していない会社法上の公開会社であるB社の特別支配会社である場合において,吸収合併に際してB社の株主に対してA社の株式を交付するときは,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,合併契約の承認の決議をしたB社の株主総会の議事録を添付しなければならない。

問69

特例有限会社の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 定款に監査役を置く旨を定めた場合には,監査役設置会社である旨を登記しなければならない。

イ 定款の定めに基づく取締役の互選によって新たな代表取締役を選定した場合には,代表取締役の就任による変更の登記の申請書には,代表取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することを要しない。

ウ 定款に,取締役の任期を選任後 2 年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めている会社の取締役が重任した場合において,取締役の重任による変更の登記の申請書に添付した当該取締役の選任に係る定時株主総会の議事録に,当該取締役がその定時株主総会の終結の時に任期満了により退任する旨が記載されているときは,当該申請書に定款の添付を要しない。

エ 特定の者を代表取締役とする旨の定款の定めを削除することによって当該代表取締役を解職した場合には,代表取締役の解職による変更の登記の申請書には,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の 3 分の 2 以上に当たる多数をもって決議した株主総会の議事録を添付しなければならない。

オ 取締役がA及びBであり,代表取締役がAである場合において,取締役Bの死亡により代表取締役の氏名抹消の登記を申請するときは,その登記すべき事項は,会社を代表しない取締役の不存在による代表取締役Aの氏名抹消及びその年月日である。

問70

合資会社又は合同会社の登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記 1 から 4 までのうち,どれか。

ア 社員Aの死亡時に解散する旨を定款で定めている合資会社において,Aが死亡した場合には,Aの死亡による変更の登記,解散の登記及び清算人の登記は,同時に申請しなければならない。

イ 合資会社の業務を執行しない無限責任社員Aの責任を有限責任に変更したことによる変更の登記は,定款に別段の定めがある場合を除き,業務を執行する社員の全員の同意があったことを証する書面を添付して申請することができる。

ウ 合同会社の設立に際し,定款の定めに基づく社員の互選によってAが代表社員と定められた場合において,Aが代表社員への就任を承諾したことを証する書面に押印された印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければ,設立の登記を申請することができない。

エ 合同会社の設立に際し,自然人A及び合同会社Bが業務執行社員として定められた場合において,合同会社Bの代表社員がC株式会社であり,その職務執行者がDであるときは,資本金の額の決定についてA及びDの一致を証する書面を添付して,設立の登記を申請することができる。

オ 合同会社の業務執行社員としてAが新たに出資をして加入するに際し,平成 30 年6 月 25 日にAの加入に関する事項についての総社員の同意があり,同月 28 日にAが出資に係る払込みの全部を完了した場合には,平成 30 年 6 月 28 日を変更日として業務執行社員の加入及び資本金の額の変更の登記を申請することができる。